自助会で起こるすべての事は
噂話や陰口にならぬよう
秘匿されなければならない。

それは関係者、家族を巻き込んで
何らかの被害・実害が及ぶ可能性が
あるからである。

僕は、亡くなったT君について
みんなの知らない初期の頃を
書いてみようと思いながら
自分自身の彼に対する感情も
整理しきれず書けなかった。

また、被害や実害が及ばないか
分からないうちは語るべきではないと
考えていた。

しかし、尊敬する人について
その行動や僕との関係性について語る上で
その舞台が自助会内の話であっても
全ての秘匿性が守られていれば問題ないと
今日、僕は判断した。

この文章でT君の関係者、ご家族が
傷つくような事があれば削除します。
尊敬の元で書いた文章を
一読戴いてからコメント願いたい。

僕が自助会に通い始めて2年が経とうとしていた。
畳の部屋。自助グループが、たまに使う広い部屋に、T君は現れた。

への字口、短髪でメガネ。目ヂカラの強い彼は人と顔を合わせずに右斜め上を見ながら、ぶっきらぼうに答えた。

初めてじゃないんですけど、この会場は初めてきた。でもまだ、ここに来ると決めたわけじゃないんです。

『あ、、、そう。』としか言えなかった。

彼は何かに対する怖れがいっぱいだった。

着席後すぐに回覧された色紙(ノート)にスラスラとコメントを書いていた。

回されていたのは僕の2年のバースデー・ノートだった。

仲間たちのコメントを読んでいる中に、達筆な字で書き記された彼のコメントがあった。

さちさん、2年のバースデーおめでとうございます。僕はスリップが止まらないので2年も辞められるなんてすごいと思います。いつか、さちさんに追いつけるよう頑張ります。

(追いつく?)

まるで僕がスリップするようなコメントに少し疑問を持ちつつ時が流れた。

3ヶ月後、重大なお知らせがあると個別にメールが来た。
やっちまったか。

彼はへの字口のまま、自助会に参加し続けていた。

テーマが合わないから話すことがないと発言を拒否するなど、強く心を閉ざしていた。
仕事で嫌なことがあったり、言いたくない事が溜まっているようだった。
顔は硬直し笑顔を一切見せなかった。

彼のお知らせは、そこからの彼の人生を変える一言になった。『僕は、このTFグループをホームグループにします』

自然と拍手が沸き起こった。
なぜ拍手されたか分からないT君は照れながら拍手を止めるように促した。

その日、初めてフェローに顔を出した。

タバコが嫌いだからか風上に座り、ニヤニヤしながら話し始めた。

なぜ僕がTFグループに決めたのか。
グループの良いところ、悪いところ
自分の悩み、怒り、怖れ等
ペラペラ話し始めたのだった。

人と比較し自分と同じ臭いがするかどうかを表現するのが特徴的だった。

○さんは、過去に出逢っても
絶対に声を掛けないキラキラしたグループの
メンバーの人。

さちさんはリーダーとかで僕とは違うタイプの人間。

なんか、妙に腹立つことをズケズケと言う人だった。
その分、どんな風に変わっていくのか。楽しみでもあった。

数カ月後、尊父ご逝去の連絡を受けた。

迷惑じゃなければ行くよ。連絡を貰ったので
仲間を連れてお通夜に参列させてもらった。

T君に笑顔が戻りつつあったのに
神様はなんて非情な試練を与えるんだ。。と僕は考えた。

しかし彼は数週間後、元気に自助会に顔を出した。
切り替えが早いのではなく、仲間に会わないと心が持たなかったようだった。

T君が通い始めて1年。またもや『重要なお知らせ』の告知が来た。

グループ所属でも発表方法が同じだったので驚きはしなかったが
【スポンサーになってもらいたい人を決めました】宣言だった。

ここからは良く笑い話にしてるんですが
当時スポンサー候補は限られていたので
僕の可能性が高いと僕は勝手に思っていた。

しかし発表された名前は、僕ではなかった。。

なんだよー、ガッカリしたよー(笑)と
本当に発表当日から僕は笑い話にしていたが
少し悔しかった。これはマジで。

更に、一年が経ちスポンサーを変える話になった時に『さちさん、相談があります』と連絡が来た。

ほらきた!一年越しのスポンサーシップのお願いでしょ。と告白を受ける女子のように待っていたら
『僕に合うスポンサーを探してください』
だった。

マジかーーー。2年連続予測ハズレ(笑)。

僕はTくん本人にも『僕じゃないんだ(笑)?』と聞いてみたけど
『さちさんはあり得ないですよー、眩しすぎるというか僕には合わないですから』と

ピッカピカに磨かれたナイフで刺された気分だった。
かっこ悪いフラレ方(大江千里※古いか(笑))

僕には合わない。僕には合わない。僕には・・
リフレインが止まらなかった。

彼はスポンサーの元でメキメキと回復を続けた。

そして彼は宣言通り僕に【追いつく】目標を達成する。

それは当時のサブ会場をリーダーとして運営して、更に地元にグループを作る目標だった。

彼は僕との直接的やり取りでも、バースデーノートでも
『さちさんみたいに行動力が欲しい』
『仲間の為に活動し続けられる人になりたい』
と書いてくれていた。

この業界の人は自尊心が低く能力があっても無いふりをする人が多い。

そんな中、彼は成りたい人になるべく実行した。
そして、そのグループは彼の遺志を継ぐ仲間たちによって運営されている。

彼はTFグループの忘年会に参加した。
数年前の12月28日のこと。

自助会が好き。仲間が好き。
そんな話をしていたが1月11日に亡くなった。

依存症以外の病気に引っ張られた。
僕は感情を整理できなかった。
神様は何も答えてくれなかった。

人は、一生涯に感じられる幸せと
不幸せのバランスは
どんな金持ちでも貧乏でも
どんなに美人でも、そうでもなくとも
一緒だという人がいる。

僕もそう思う。生涯を通じれば
幸せの総量は変わらないんだとしたら
T君は自助会で、多くの幸せを掴み取ったんだなと理解した。

幸せと不幸せのバランスが一致して人が得られる幸せの総量がマッチしたから天国に行くことを決めたのかな。
複数年経って、今、僕の気持ちを整理すると
そいうことなんだと思う。

今年も多くの仲間からT君のお墓参りのお誘いがありました。
残念ですが直近で行くことは出来ませんが必ず立ち寄って、近況報告させてもらうね。

T君、今日は君が大好きだったTFグループの忘年会だってよ。


きっと降りて参加してるよね。
君の大好きな仲間たちがそこに居るから。

ニヤニヤしながら話してよ。
向こうでの暮らしをさ。

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